昔にお付き合いをしていた女の子が、来月結婚すると聞いた。


風の噂で。
風邪を引いている時に。


30過ぎになって初めての経験だ。


何か特別な感情や未練がその子にあるわけではない。
でもなぜか、とても寂しい気持ちになった。


何か、時の狭間にすっぽりと入り込んでしまって、自分だけ置いてけぼりをくってしまったように。


友達に聞いてみた。
経験のある男はみな、そんな感情を抱いていた。


女性は、きっとこんな事は思わないのだろう。


それぞれの時間は、四方八方に進み続けている。


一度、進み出したらそれはまるで宇宙の果てのように膨張と進行を続けている。


決してもう交わる事のないその先端を、僕は気後れしながら指をくわえてじっと見ていることしか出来ない。


暗闇の中、比べるものもないからもはや進んでるかどうかも、上か下かも分からない。


僕はまだここに立ち止まったままなのか？
逆立ちしているのか。


「そんな思い出と、今日限りおさらば、寂しいけどね。
何でもないのに泪が出てくるのは、きっと本気で誰かと笑いたいだけなんだ。」


ふいに思い出した歌詞とメロディが、懐かしく思えた。


だから、僕もきっと進んでいる。


あの日と同じＴシャツを着て、ヘラヘラしているんだけども。


頭に血が上ってもないから、逆立ちもしていない。と思う。