深夜2時過ぎ。
地元の大手居酒屋チェーン店は地下にある。
お世辞にも繁盛しているとは言えないが、そのガランとして時に酔っ払いの罵声しか聞こえてこない静かな空間が僕にはとても心地良い。


そう、辺りはまどろんでいる。


久々に先輩と同期とゆっくり酒を飲む。
ライブに関して、あーだこーだ。芸事に対して、あーだこーだ。


互いを褒め合ったり、欠点を指摘し合ったり、慰め合ったり、ボケたり、突っ込んだり、笑ったり、欠伸したり、寝たり。


時間は一定のリズムと一定の重さで確実に、僕らの両肩に圧し掛かってくる。


こんな瞬間は、良い意味でも悪い意味でも永遠に続く訳が無い。
世界が変わり、環境が変わり、色が変わる。
そして、終わりを告げる。


左右の景色を楽しんだり、空を見上げたり、立ち止まったり、後ろを振り向く余裕などなくなり、侘びしさだけが深い影を落とす。それはそれは深い影だ。
ただそれが、紛れも無い多くの日常だ。


もう少し、もう少しだけしがみつきたいと純粋に思った。
だから、せめてこの瞬間はだけは嘘をつかずにありのままでと、心の中で呟いた。


明け方、柄にもなく肩を組みながら外に出た。
この肌寒さが世間の冷たさだとしたら、もう少しだけ、耐えられそうだな。
今度は少し、声に出して呟いた。


何か言った？と聞かれたので、何でもない。と嘘をついた。
此処は良いんだ。もう国境の外だから。
今日が、背中を押してくる。
そんな急かさないでよ。皆ちゃんと歩くから。歩けるんだから。