朝五時半に家を出た。
起きれるかが不安だったため、一睡もしなかった。

ショボショボの眠い目をこする僕を乗せて、京葉と名のつく電気列車は静かに走る。

外は、殺風景で時より川と観覧車、非現実的な異国情緒たっぷりのお城が見える。
思わず身を乗り出すが、恨めしく思う。

こんな静かな朝は、シガーロスのメロディがぴったりだ。

異様に大きなリュックを背負った初老の男性は仕切りに回りの人間を凝視している。

初夏を感じさせる露出の多い、ギャル風な女性は携帯をひたすらいじる。

寄り添うように静かに眠る十代のカップル。ほほえましい。

契約がかかっているのか、朝から緊張な面持ちのスーツをまとったサラリーマン。

閑散とした車内に様々な人生が交錯している。
二度と会う事はないであろうその人達は、別々の駅を降りていく。

僕はと言えばさほど辛くないは肉体労働をして、十分なお金を頂いた。

若干だが、心にゆとりが出来る。人間とは正直なものだ。

お金持ちになりたいと思った事はない。
労働に対して妥当な賃金だけを頂ければそれで良い。
お金は最低限あればと最近つくづく思う。

しかしその最低限は、お金にゆるい自分にとってはそんなに考えずに使える程度であったりするから厄介だ。

最低の低は、やはりみんな辛い。

今日も朝までバイトだ。
これが終わったら、パッと楽しい事に使ってしまおう。

本当に大事な物はもっと他にあるはずだ。
そう自分に言い聞かせるために。

そうだ。家賃だ。