自分がイライラすることは、お笑いに関する事以外に殆どない。


それは朗らかと言えば、聞こえは良い。
しかし、悪く言えば人に対して、物事に対して愛情が薄いと感じなくもない。
怒りという大変なエネルギーを消費する行為を他人に行わないのだ。


しかし、最近純粋にネコまっしぐらの自分はやはり変わってきた。


苛立ちを覚えたのは、電車を降りる際にそれを待たずして乗車口に我が物顔で立ちはだかるカップルにだ。


大人になる事は色々な枠組みを意識し、状況によって当てはめる事だろう。


彼等の「恋人同士」という強い枠組みは分かった。
しかし、人類であったり日本人であったり社会人であったり、生まれてきた意味であったり死んでいく理由であったり現在であったり、無数の枠組みがあるだろう。
その種類、数が圧倒的に少ない。


二人だけで生きている訳ではない。必ず様々な犠牲の上に生かされている。
それを分かっていない。
それを気付かずして死んでいくのだろうか。


でもそれがその他大勢なのだろうか。


こういう時に世の中が病んでいるとつくづく思い、切なくもなる。


僕は息絶えるまでに一つでも多くの枠組みを手に入れたいと思っている。


だからカップルよ、安心してくれ。
その程度の枠組みを僕はもう手に入れているのだ。


したがって、乗車口ですれ違い、苛立ちを覚えた瞬間。
その瞬間からキミはすでに僕の親友であり、キミの彼女は僕の彼女のようなものだ。


二人のお互いを思う愛は僕の大きな愛で包み込まれているのだ！




いやっ…。この枠組みは棄てるとしよう。
資源ゴミとしてリサイクルして。
結果、単にカップルを羨ましがるみたいな低次元な枠組み。


そうやって僕は大人という枠組みを、必死でこしらえていく。