世間は年の瀬を迎えている。
が、例によって全くその感覚がない。


深い眠りから覚めるとまるで現実から取り残されたような浮遊感。
悪くは決してない。逆に居心地は良い。


でもここの永住権は貰える訳はないから、自らの手で凍てつく大地をじわりと引き寄せる。


年越しを迎える準備で大忙しな商店街へ少し出た。
季節感を感じようと切り餅を買った。


膨らむ、膨らむ。よく膨らむなぁ。
腹膨らむ、胸膨らむ。夢膨らめよぉ。


先日、芸人仲間が芸人を辞めると言った。


昔であれば訳知り顔で、しょうがないね。頑張れよ。おざなりの薄っぺらい優しさを見せる。
それが当たり前のように、よく出来た仮面を被る。
オートマチックに、流れ作業だ。


とにかく辞めない方が良いと言った。


何の根拠もないのに。責任も取れないのに。夢もないのに。
もはや自分に言い聞かせるように。


完全なお節介、大きなお世話で本人にとっては良い迷惑だったろうな。何の意味があるのか。
でも、紛れも無くそう思ったしな。


流れ作業の方が絶対効率的だ。
今年一年、不器用になった気がする。生産性が悪い。


でも、食料自給率と人間くささはアップしただろうか。