満員電車からひたすら遠ざかる日々。
平日はどこもかしこも空いていてすこぶる快適だ。


これだけ悠々自適な暮らしなら、平均的な経済力を兼ね備え、毎日が楽しけりゃ良い。なんて肩の力を抜いた日にゃどんなに楽な事か。


しかし、ただ楽して生きたい訳ではないから厄介だ。そして、そこが面白い。


先日、長年勤めていた会社を辞めた。
会社最後の日、僕の未来を暗示しているかのような大雨にも関わらず、皆が一目も憚らず胴上げなんかしてくれた。
食うに困らないようにとカップ麺もたくさん頂いた。
野郎ばかり、そんな柄に合わない人まで上半身は皆裸でとびきり素敵な歌まで届けてくれた。


あれだけ命をかけて長く続けた仕事も自分でも不思議なくらいあっさりと頭の片隅に追いやられる。
長い時間を精一杯費やして手に入れたモノ、最後に残ったモノのは、仕事なんかじゃなくて仲間だ。
素敵な仲間に囲まれると、自分のやってきたモノが間違いではなかったと初めて気付く。


無数に別れていく人生。
まるで、毛細血管の様に広がっていく。
でも決して独りじゃない。
だから僕は今日も一人、外の景色に少し目をやりながら、行き先の分からないバスに揺られている。