養成所を卒業後、初めて事務所主催のライブのネタ見せがあった。
僕らは言えばフリーとなった訳だから、ライブで勝ち抜かなければいけない。

その前日。
同期のボンジュン足立君から電話が何回もきた。
ネタを見てほしいとの事だった。
自分は用事があり遅くなる。と言うと、12時過ぎても良いから見てくれと必要に食い下がってくる。

同期の自分を宛にしてくれてるのは勿論有り難い。
でも、何よりその芸に対しての真摯な姿勢に衝撃を受けた。
なんだ！そのみずみずしい情熱は！なんだ！そのもぎたてのパッションフルーツは！

僕らコンビも結構スポ根なので、甘えをとことん排除してきた。
それでも、お前等もっと出来るだろう！ちょっと気が抜けてるんじゃないか！と、二往復ビンタをされたぐらいの衝撃だった。

現に、そういう時期のそういうメッセージだったのかもしれない。

深夜男が三人、ネタに関してあーでもない、こーでもない。
軽いお笑い談義をしたのち、二人は帰っていった。

結局、午前中のネタ見せまで一睡も出来なかった。

目を閉じると、雨の中走って帰り自分の家の前に着くと、
傘をさして静かに佇んでいる二人の影が、頭を離れない。

面白いや面白くない、売れる売れないとかそっちの事は誰にも分からない。

でもこういう人達の軌跡がいつか報われる、報われる世界があって欲しい。と祈る、妙に空気が神聖な明け方。気のせいかな。

まだ勝敗はついてない。

こんな事を書いているが、足立君からは一千も、びた一文も頂いてない。

どちらかと言えば、週に一、二回風呂を貸している。
トイレの便器の方までビチャビチャにするのは、やめて頂きたい。切に願う。